CKD(慢性腎臓病)への取組み【じんの内医院|医療法人朝霧会】佐賀/人工透析内科/泌尿器科/腎臓内科/皮膚科/心療内科

CKDに対しての思いmessage

日本腎不全看護学会は「腎不全看護に携わる看護職のための研究発表、情報交換の場を提供し、専門看護師の知識水準の向上と認定制度確立を目指して発足した。
目的に人々の健康と福祉に貢献し、世界における学術の発展に寄与する1)」とある。
佐賀県立病院好生館透析センター勤務中に当学会に2回参加した。当学会では腎症早期からターミナル期までの幅広い患者を対象として患者のQOLや生存率の向上に寄与するために、透析療法の臨床看護に主体的に取り組む質の高い看護師の育成をしている。
一方CKDという聞きなれない言葉を耳にしたのもこの頃だったが、2002年CKD(慢性腎臓病)の概念は「増加し続ける透析患者を減らすために、腎機能が軽度低下に留まっていて将来的に透析に至る可能性のある患者を対象とし、早期介入で進行を抑制する2)」ことである。
こういったCKD概念の期待のもとに腎不全看護の範囲が大きく拡大されていった。

第41回九州人工透析研究会では「透析患者のよりよい生活を支援する看護とは3)」がテーマで、透析看護認定看護師や透析療法指導看護師が患者を全人的に捉えた看護支援をひたむきに展開されており、腎不全看護のレベルの高さに圧倒された。主催の済生会熊本病院血液浄化センター管原園子看護師長より「佐賀でも作りませんか。応援しますよ。」と声をかけて頂いた。

しかし当時は看護師有志の発足に迷いもあった。 勇気を頂いたのは、好生館によくお見えになっていた陣内謙一先生の「素晴らしい事だと思います。ぜひ頑張ってください。」という激励の言葉だった。またこの頃、佐賀県立病院透析センター長だった富吉義幸先生より透析医部会を紹介して頂き、先生方に佐賀県腎不全看護研究会発足の趣旨を説明させて頂いた。
そして当時佐賀大学腎臓内科准教授の佐内徹先生、前田病院院長の前田利朗先生、じんの内医院院長の陣内謙一先生に顧問を快諾して頂いた。さらに前佐賀県看護協会大久保薫会長より後援の許可を頂くことができた。
皆様のご支援とご協力に深く感謝を申し上げたい。

佐賀県腎不全看護研究会の目的として、「腎不全看護に関する新しい情報の提供の場となる」「質の高い腎不全看護師の育成(CN・DLN)」「県内の腎不全看護研究の連携を図り患者のQOL/生存率の向上に寄与する。」「腎不全看護、CKD治療におけるチーム医療の推進」とした。
九州では熊本、福岡、長崎、鹿児島に次いで5番目の誕生となった。今では県内の若い腎不全看護に携わる看護師たちが、現場での悩みなどを解決していく組織に成長している。

第6回総会(2015年1月25日)では昭和大学保健医療学部看護学科・老年看護学准教授三村洋美先生の特別講演「腎不全患者が生きることに寄り添う 副題~病みの軌跡を活用して~」があった。
そこでは1992年「病みの軌跡4)」を提唱したストラスとコービンの看護理論の論考であったが黒江5)は「クロニックイルネスと表現するときケアの焦点は治癒(cure)にあるのではなく“病気とともに生きる事(living with illness)”にある。
それは病気を管理し病気とともに「生きる方策を発見する」ことでもある。
この発見を支えるためには、その個人と家族がどこからきて、どこへ行こうとしているのかを常に心にとめておかなくてはならないとされる。」(中略)「未来に視点を持ちながら、病気による自分への影響と折り合いをつけ、編み直すことを包摂したものであった。
そこで求められる専門職者の姿勢は支持的支援(supportive assistance)であるとされており、このような支援を続けようとするとき、私たち看護職者はその人の内面に1人の人間として近づくことが求められ、そこでは人の語りをどのように聴くかという問いに直面させられる。
フランクは次のように指摘する。「語ることは容易ではない。
聴くこともまた同様である。重い病を患う人々は身体ばかりではなく、その声においても傷ついている・・・」と述べている。
「病みの軌跡」の三村先生の講演には福岡県や熊本県からも参加があり、腎不全看護師の現場で事例と丁寧に向き合うことで見えてくる「病みの軌跡」に寄り添ったケアーに多くの看護師が感動した様に推察する。

第58回日本透析学会(2013年6月)イブニングセミナー会場(福岡)でCKDパスで日本をリードされている当時近江八幡市立総合病院医療センター腎センター長・八田告先生に「あなたの医院でもCKD検査教育入院はできると思います。」と激励と暖かい支援を頂き、当院にて同年7月にCKD 委員会を発足した。

医師・薬剤師・看護師・管理栄養士・医事・厨房職員で準備を始める。
当院でも2014年8月から糖尿病看護認定看護師の松本による「病みの軌跡」の学習会を開始した。
自分の患者の「病みの軌跡」を追うことによって理論を更に発展的に学んでいくことは重要であると考える。

2014年、「きょうの健康」慢性腎臓病を治すの「ステージG1,G2では適切な治療で完治も望める6)」という筑波大学教授山縣邦弘先生の記事に接し、当院のCKD検査教育入院(腎臓病教室を含む)の目的は、「CKD患者に幅広く教育介入をする。特に、CKD(G1・2)の患者の教育に力を入れ、患者を透析から救済する。 患者とご家族の達成感、満足度、即ち生きる喜びと感動を共に分かち合い、当院からCKD教育の重要性を発信する。」とした。

近江八幡市立総合医療センターのパスを参考に2014年5月からCKD検査教育入院1週間コースを開始し、更に患者が利用しやすい1泊2日コース、2泊3日コースを10月から開始した。

次にステージG1~G2(糸球体濾過値60~90)の患者を対象に第1回腎臓病教室(2014年11月13日)を開始し、第6回(2015年11月24日)を終了した。
CKD検査教育入院と腎臓病教室は患者のセルフマネジメントを支援することによって、患者がCKD早期から参加しやすいことを目指している。
以上のことから透析医療や看護ケアの向上に切磋琢磨する仲間達が、今度は透析から患者を救済する予防教育を開始したことに意義があると考える。
つまりこれは国の予防医療の施策に合致し、今日の透析医療の現状が分かる透析施設だからこそ、目標として透析を回避する責務があると考察する。
このような事から当院では腎不全看護の拡大とその実践を共有し、透析開始(導入)の延期と合わせて透析を回避できる医療施設を目標に進んでいきたいと考えている。

【引用・参考文献】

  • 1)日本腎不全看護学会ホームページ URL:http://www11.ocn.ne.jp/~jann1… 2014年11月3日閲覧
  • 2)第1回佐賀県腎不全看護研究会2010年1月24日特別講演「腎不全看護の現状ー学会の立場から」資料7頁
  • 3)九州人工透析研究会会誌 第41回九州人工透析研究会総会抄録集 … 2008年33頁
  • 4)「慢性疾患の病みの軌跡」1995年 ピエールウグ 医学書院
  • 5)「病とともに生きる」を援助することについての論考 日本腎不全看護学会誌 VOl・14・No1号、日本腎不全看護学会 …2012年11頁
  • 6)雑誌「きょうの健康」16-17頁 2014年9月 NHK出版 「慢性腎臓病を治す」山縣邦弘 筑波大学大学院教授

Item content
Item content
1998年

日本腎不全看護学会発足

2002年

米国のK/DOQよりCKD(慢性腎臓病)の概念の提示

2003年

5学会合同認定「透析療法指導看護師」認定試験の実施

2008年

第41回九州人工透析研究会参加 透析看護認定看護師(CN)透析療法指導

看護師(DLN)合同企画プログラムに共感

2009年

日本腎不全看護学会指導のもと佐賀県内27の腎関連医療施設の看護師有志にて、佐賀県腎不全看護研究会発足

「医療法人 力武医院」内にて同事務局の運営開始

2012年

佐賀県立病院好生館定年退職後に「医療法人朝霧会 じんの内医院」にて勤務

2013年

7月じんの内医院「CKD委員会」発足

2014年

5月じんの内医院「CKD検査教育入院」、11月「CKD教室」実施

2015年

12月現在に至る。


top >> CKD(慢性腎臓病)への取り組み >> CKDに対しての思い